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レビュー・劇評
Review / DANCE CARAVAN MIYUYA『THE FOREST』
牧野としこ
2022年12月31日
「男が目を覚ました瞬間、そこは見たこともない森の中でした。目の前には傷ついた精霊が。その精霊は疲れ果て体を伏しています…
男は深い闇の中、精霊と特別な時間を過ごすのでした…」
こんな幻想的なナレーションで幕が上がるDANCE CARAVAN MIYUYA(ダンス キャラバン ミユウヤ)のダンス公演「THE FOREST」は、私を摩訶不思議な世界へ誘い、師走の慌ただしさを忘れさせてくれる癒しのひとときとなった。
この日、深い闇の森となったやどりぎ座のステージで、男と精霊は音楽と一体となって踊り、それぞれの心模様を表現していく。
台詞は一切無く、短いナレーションのみ。
男と精霊が出逢い、互いを知り、徐々に心の距離を縮めていく過程が、踊りのみで見事に伝わってくることに驚き、気づいたら私の心も踊っていた。
男のみのダンス、精霊のソロ、2人のデュエット、シーンにより曲調も様々心情も様々。
繊細な心の機敏が、ダンスのみで表現できるなんて!ダンス音痴の私が生まれて初めて「踊りたい!」と思ったほど素晴らしかった。
きっと、ダンサーの息遣いや振動も伝わってくる距離感のやどりぎ座だから、より躍動感を体感できたのだろう。
2人のダンサーは、序盤の抑え気味のアクションからどんどんダイナミックになっていった。まるで2人の距離感と呼応するように。
ダンスで語る2人のストーリーは、美しくて儚くて瑞々しくて、時に初恋のような切なさも感じさせるものだった。
音楽と振り付けの融合も素晴らしく、音の拾い方や表現の仕方がスタイリッシュで、ショーとして見応えがあり、身体ひとつで表現する、という職人技に惚れ惚れ。
ファンタジックな夢の世界に身を委ねたあの時間、私の背中には確かに羽が生えていた。
[ 観劇データ ]
DANCE CARAVAN MIYUYA『THE FOREST』ロングラン公演
演出・脚本・振付:望月優也
出演:メインキャスト 秋山実優、望月優也
キャスト 相馬千颯、神田陽南乃、長谷川右京、河原崎朱、水野知優、神田暖乃果、山田明、柴田さら、宮崎陽梨、大草愛咲
会場:人宿町やどりぎ座
観劇日:2022年12月17日(土)
[ レビュワー プロフィール ]
牧野としこ(まきのとしこ)
猫と映画をこよなく愛するMC & ラジオパーソナリティ(エフエムハイ76.9 & ラジオエフ84.4)ベストムービーはゴッド・ファーザー まちは劇場で演劇の魅力を知り、ただいま「静岡愛」熱烈加速中
写真提供:秋山実優