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Review / 七間町ヴォードヴィルvol2 〜三保の松原 愛の讃歌~

牧野としこ
2022年10月6日

ヴォードヴィル…このお洒落な響きのフランス語は17世紀末にパリの大市に出現した演劇形式のこと。今は、歌、踊り、寸劇などを組み合わせた大衆的な娯楽演芸をさすらしい。

徳川慶喜公が愛した浮月楼で行われた「七間町ヴォードヴィルvol2 ~三保の松原 愛の讃歌~」は、三保の松原に憧れ、能「羽衣」に魅了された女性エレーヌと夫の物語。
世界で活躍するアーティストのパフォーマンスは、笑いあり感動あり…まさにヴォードヴィルの世界そのものだった。

冒頭は、まるで「男たちの挽歌」のチョウ・ユンファなサングラス姿の案内人が登場。
チャップリンを彷彿とさせるコミカルなパントマイムで幕が上がる。
ユーモアを交えながら語るその艶やかな声色に、私は早くもノックアウトされ聴き惚れた。

すると、天女のようなエレーヌが現れる。
その美貌はもちろん、台詞まわしの抑揚の美しさ 所作の美しさに目が離せなくなった。
羽衣に魅了されたエレーヌは、間違いなく観客全員の心を虜にしていた。
すると、突然、全身 清らかなオーラを纏っていた女性が、妖艶なポールダンサーに変貌。
頭のてっぺんからつま先まで一瞬たりとも目を離せない魅惑の時間だった。

合間に挟まれるクラウン達のコミカルな掛け合い…案内人の人情味溢れる口上…、
お月様のような光を放つジャグリング…バックに流れたエリック・サティのピアノの調べ…
全てのパフォーマンスが魅力的で、厳選素材で作られたフルコースを堪能した気分。心が満たされていった。

誰もが知っている三保の松原の羽衣伝説。能「羽衣」に魅了されたエレーヌと夫のストーリーが、こんなにスタイリッシュに!自由に!軽々と時を超えてしまうなんて!
静岡の映画とパフォーミングアーツの歴史の舞台化に取り組む七間町ヴォードヴィルシリーズだからか?

ピアノとチェロの生演奏は、演者に寄り添い包み込み、時折挟まれる無音には余白の美があり、刹那と永遠が混在する余韻あるステージとなっていた。時を超えた浪漫の旅へ誘われ、独特な浮遊感とノスタルジックな世界観に魅せられ、私は日付が変わるまで夢心地だった。

[ 観劇データ ]
七間町ヴォードヴィルvol2 ~三保の松原 愛の讃歌~
会場:浮月楼本館
観劇日:2022年9月20日(火)

[ レビュワー プロフィール ]

牧野としこ(まきのとしこ)
猫と映画をこよなく愛するMC & ラジオパーソナリティ(エフエムハイ76.9 & ラジオエフ84.4)ベストムービーはゴッド・ファーザー  まちは劇場で演劇の魅力を知り、ただいま「静岡愛」熱烈加速中

浮月楼庭園

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