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コラム / 指示を出すのでなく、信頼を示す。ー ミチタリアンズインミライエリアン代表 嶋村彩さんとの会話から

 障がい者と健常者の混成メンバーで構成されるダンスカンパニー「ミチタリアンズインミライエリアン」によるダンス公演『君が名づける鳥』が12月17日(土)に開催される。公演を1週間後に控えたなかで、代表の嶋村彩さんにお話しを伺った。

 嶋村さんはスポーツジムのインストラクターとして仕事に励む傍ら、コンテンポラリーダンサーとしても舞台に立つ。そのような経験を重ねる中で出会ったのが、ソーシャルサーカス(SC)[*1]である。2016年に横浜を拠点とするソーシャルサーカスを推進する団体「SLOW LABEL」のSCワークショップで障がい者と一緒に身体を動かしパフォーマンスを行った。それは健常者である自分と何も変わることのない創作行為だと腑に落ちたのだろう。その後に自らが静岡でSCワークショップを開催し、さらに2019年には団体も立ち上げてしまった。それが今回の公演主催者である「スロームーブメント静岡実行委員会」だ。

 昨今、障がい者の市民参画を進めるためにパフォーミングアーツを通したさまざまな取り組みが行われている。だが本公演は誤解を恐れずにいえば市民参画のためのプログラムではないと嶋村さんはいう。どういうことか。一般的に障がい者への機会提供が目的ならば参加する/させること自体が目的となるだろう。そこではアウトプットの質はあまり問題にならない。「がんばったね」の一言ですべてが収まるはずである。そうではなく、この公演は創作物としてのクオリティを目指しているとはっきりいうのだ。つまりこの取り組みは芸術性の追求であるし、人間の可能性への探求だということなのだ。ゆえに「参加」だけで良しとせず、アーティストとしてのパフォーマンスクオリティを求めていく。

 本公演を実現させるために、助成金の申請を二つ行ったということだが、ひとつの助成団体からは落選の通知が届いた。嶋村さんによると、参加者をもっと広くから募るべきではと助言があったそうだ。だが、彼女はそうせずにこれまで関係性を築いてきた人たちへ声をかけた。健常者13名、障がい者9名の22名。多くは団体を立ち上げてから一緒にやってきた仲間だ。それは気心が知れてやりやすいということではない。これまで舞台に立ち、弱音を吐かず、出来ないとあきらめず、チームのために行動できてきた実績を評価してのことだという。つまり信頼のおけるダンサーとして作品出演をオファーしているということなのだ。

 嶋村さんは、障がい者ダンサーの表現への興味や意欲はダンスが出来る人よりも高いところにあると驚く。それを目の当たりにしてほしいという。勢い余って動線を外したり、バミリ[*2]が見えなくなったりしてしまうことも多々あるという。そのようなときにフォーローするのが健常者のサポートダンサーの役割だ。サポートダンサーといってもほとんどが豊富な経験があるわけでない市民ダンサーである。しかしサポートダンサーへの期待も大きい。障がい者ダンサーが予期せぬ動きをしたときに、それを気付かれずにフォローするところまで求められる。そのフォローをさりげなくするのが腕の見せ所ということだ。

 このような混成チームでは、どうしても障がい者ダンサーが目立ってしまうだろうが、作品の質を担保するのはサポートダンサーだと、嶋村さんは述べる。それは伝統的なダンス作品がソロダンサーだけではけっして成り立たないように、アンサンブルが縁の下の力持ちとして支えていることと同じである。けっして脇役と捉えず、アンサンブルこそが場面転換を転換と見せずに舞台に一貫性を持たせているという考え。表現を爆発させちゃったり、ずっこけちゃった人を、失敗と見せないように下支えできるのがサポートダンサーの条件。ソロを上手く踊るかではなく、作品の世界観をどれだけ持ち上げられるかが重要なのだ。

 嶋村さんとお話ししていると、クリエーションに対する真摯な取り組みが、そのまま出演者への真摯な対応につながっていると感じる。今回演出を務める松島誠さんが、「このチームの良い雰囲気は彩さんの人徳だ」とおっしゃっていたが、まさにその通りだろう。指示を出すのでなく、信頼を示す。その積み重ねによって、少しずつ立ち上がってくるものがあるのだ。主宰や演出家がこの通りにやってくださいではない。良い作品創りのために一緒に悩み、汗をかき、稽古を重ねた結果が今日(いま)を作っている。

 プロフェッショナルなダンスカンパニー「ミチタリアンズインミライエリアン」。彼ら彼女らの鳥にどんな名前を付けようか。幸せな悩みが浮かぶ。

テキスト:ココモンズ編集部

[*1] ソーシャルサーカス サーカス技術の練習や習得を通じて協調性・ 問題解決能力・自尊心・コミュニケーション力などを総合的に育むサーカス(SLOW LABEL HPより転載)
[*2] バミリ 舞台上で出演者の立ち位置やセットを配置するために示す目印

[ 公演情報 ]
ミチタリアンズインミライエリアン
 『君が名づける鳥』

会場:MIRAIEリアン コミュニティホール七間町
日時:2022年12月17日(土)①13:00~13:50 ②17:00~17:50
   ※15分前より開場
料金:一般 3,000円
    ※障害者手帳・療育手帳をお持ちの方2,000円(介助者1名無料)
   高校生以下1,000円
    ※障害者手帳・療育手帳をお持ちの高校生以下 無料(介助者1名無料)
チケット:イープラス
https://eplus.jp/sf/detail/3735250001-P0030001

[ 関連情報 ]
・公式サイト:https://slm-shizuoka.amebaownd.com/
スロームーブメント静岡実行委員会代表の日記
Interview / ミチタリアンズインミライエリアン『君が名づける鳥』演出:松島誠
SLOW LABEL 公式HP

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