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モノローグ「穴の会」の合同稽古にて

モノローグとは、一人語りの台詞のこと。日本語で独白。対義語は「ダイアローグ(対話)」。

日本では演劇のモノローグ集は多くないということですが、その作品集として渋谷悠さん(劇作家、舞台演出家、脚本家、映画監督)の「穴」、「ハザマ」があります。そのテキストを使って勉強会を始めたのが伽藍博物堂を主宰する演出家佐藤剛史さんを中心とした「穴の会」です。もともと演劇ワークショップで集まっていたメンバーがコロナ禍で集まれなくなったことから生まれた活動だそうです。モノローグなら相手がいなくても練習が可能。みなさん社会人として演劇に関わっているので、社会生活に支障を来たすかもしれない接触は少しでも減らしたい。そんなメンバーの要望をうまいこと満たしたものがモノローグだったのでしょう。

「穴の会」のメンバーは現在十数名ほど。2021年1月から始まった活動も3年目を迎えました。稽古を重ねれば発表したくなるのが役者というもの。すでに3回の自主公演を重ねています。その都度出演できるメンバーを募り、戯曲集から好きな作品を自ら選び発表するオムニバススタイル。どの作品も10分以内で終了します。短ければ2分ほど。モノローグは短くても全て一人で舞台を仕切らなくてはなりません。それは役者としての経験値をどれほど高めてくれるのでしょう。みなさんを見ているとそのポテンシャルを実感しているようです。もちろん取り組めば取り組むだけ、モノローグゆえの難しさに直面するはず。でもそれこそが上達の証。次なる上演に向けてきっと自主練にも熱が入るのだと思います。

この4月から新たなメンバーを募集して新年度の「穴の会」が始まりました。月に一、二度定期的に合同稽古を開催。お互いに稽古を見合いながらフィードバッグを行います。モノローグは一人で稽古ができるのがメリットですが、合同稽古も演技上達のために大きな実りをもたらします。自分の演技を見てもらえるのはもちろんですが、他者の演技を見てフィードバッグを与えることは思考を整理するために役立ちます。それによって、きっと自らの演技を客観的に振り返ることができるはず。そして一緒に稽古する仲間がいることはモチベーションアップにもつながるでしょう。

メンバーにモノローグの良さを尋ねてみたところ、こんな言葉が返ってきました。

演劇に関わりたいが、日常を考えると「劇団」に所属するのは躊躇われる。自分のペースで出来る「穴の会」のゆるさが自分に合っていた。一人芝居は本番の直前まで、演技をどうするかチャレンジできるところが良い。閃いたことをすぐに試せることもならでは。それに短い本番でも一人きりなので私が主役。充実感がある。(H.H)

通常の演劇は演出家がいるので、演出は与えられるもの。しかしモノローグは自分自身で考えなければならず勉強になる。ダンス表現も行っているが、演劇は言葉を使い多くの人が関わるからより複雑。時には理解し難いこともあるが、モノローグなら腑に落とすことができる。誰にも迷惑かけないところもいい。(R.K)

普段は劇団として活動しているので、その時は役者として臨んでいる。モノローグでは作品をつくるときに役者ではなく演出家のように取り組めるのが面白い。自分のペースで取り組めるし。ただし、自由にできるので、自分だけが気持ち良くなってしまうことに注意が必要。充実感は必要だけど、それよりも観客に感情的な部分をどう受け取ってもらうかを考えないといけない。自分よがりにならないように、客観的な外からの視線を絶えず持つことが大切になる。(H.T)

それぞれにとても興味深い答えを頂きました。すべて一人で出来るからこその醍醐味を感じていることが分かります。その中で自分よがりにならないようにと自戒していることにとても共感しました。世阿弥の言葉である「離見の見(りけんのけん)」を想起させます。もっともこれは言うは容易いけど行うのは困難が従います。個人的な見解ですが、それはモノローグの構造上の問題も少なからずあるように感じます。どういうことでしょうか。

モノローグが盛んなアメリカではモノローグ戯曲が数多くあるといいます。その理由の一つに俳優たちがオーディションに使うための需要があるからということ。舞台芸術が興行的にも発達するアメリカでは、俳優たちは役を得るために多くのオーディションを受けるということでした。そのときに自分を表現するためにモノローグを披露します。この場合、俳優はあくまでも目の前のプロデューサーなどの審査員に向けて演じます。自分の実力を見せつけなければいけません。そのためには自分の魅力を出せる台本を選ぶでしょう。それは必ずしも観客に向けた芝居とは異なるはずです。思うにモノローグ戯曲には、自分を良く見せようとさせる力が内在してしまっているように感じるところがあります。本来の舞台は俳優の実力をひけらかす場ではないことは自明です。このモノローグ演劇の陥りやすい穴をどう回避するか。もっとも、それがこの演劇で取り組むべき課題であり本質なのかもしれません。

コロナ対策としてはじまったモノローグ演劇の試みは、「それしかない選択」だったのだと思いますが、3年を経てその魅力を実感するようになり「あえて選択」するものへと変わってきました。これからどのような進化が見られるのか楽しみです。もちろんモノローグの実力を積み上げたから、そのままダイアローグの力も付くかと言えばそうばかりではないのかもしれません。ポストコロナに移行しつつある昨今、演劇の集団創作の機会が増えて舞台に立つことも多くなるはずです。その時にこの経験が再び意味あるものとして意識されるのではないかと思います。

モノローグ「穴の会」は、ゆるやかな集まりです。会費ではなく合同稽古へ参加する時は千円を徴収するだけということ。ほかに必要なのはモノローグ集「穴」と「ハザマ」のみ。いつでもメンバーは募集しているようですので、気になる方は稽古を覗いてみたらいかがでしょう。問い合わせは主宰の佐藤さんにご連絡ください。

モノローグ「穴の会」
Tiwitter @found_hole

合同稽古参加費 1,000円
場所:葵生涯学習センターなど
日時:奇数週の月曜日 19時

 5月の合同稽古は5/15(月)と29(月)となります。
 場所:葵生涯学習センター 35教室

お問い合せ
伽藍博物堂(佐藤剛史)
http://garan-garan.com/

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